詩5編分

氷葉栖奏


 
 ペッチャ
 ムジャバナデ
 ムンバッパ
 
 ペッチャムジャバナデムンバッパ
 
 ムンバッパ
 ムンバッパ
 ムンバッパ
 
 マモーン     (マモーン)
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 量子力学(個人の意見を含む)
 氷葉栖 奏
 
 x軸にくし刺しされた
 ダンベル型のp軌道をふりまわす
 
 あれ、電子当たらなかった?
 
 仕方がないのでpという電位に電子を集める
 底はシュレッダーになっていて
 ディンガディガと電子を刻む
 途中でイーというひらめきが聞こえたり
 パイ(甘い)が出てくることがある
 
 そんな時は、xyz座標空間上にばらまくんだ
 そうしたらダンベルのえさになるだろう!
 
 
 
 
 
 
 
 アッポウ
 HIBASU Sou
 
 apple
 apple
 
 イデアを支配するapple
 初心者を支配するapple
 
 apple
 
 apple
 
 ぼんやりと迫ってくる
 アッポウ
 
 赤色に濡れた
 アッポウ
 
 見えない
 触れられない
 聞こえない
 食べられない
 apple
 
 吸い付いて
 噛みついてくる
 
 刺激的で
 バイオレンスでAn
 apple
 
 誰のものでもない
 an apple
 
 欲しい 欲しい
 舌打ちして
 喉からつかんだ
 似 apple
 
 シャリシャリ
 シャリシャリ
 
 咀嚼して
 Broken apple
 
 ガーデニング
 ヒバスソウ
 
 壊れたタクシーで行きます
 私のお庭へと
 沢山の黄色いマリーゴールドと首が植わっています
 タクシー運転手は黒いマリーゴールドときどき首
 
 お庭へは到着しません
 壊れたタクシーは壊れた駅へ
 切符を買うと球根が出てきました
 まあ、チューリップかもしれないわ
 運転士の首に球根を植えると咲いたのは彼岸花
 汽車はゆっくり進みます
 マリーゴールドの花びらを煙突から吹き出して
 
 出発点が世界の反対側ならどこへ行こうとお庭へは
 近づけます
 汽車から降りてバスへ乗り換え
 中には沢山の土が載っていて乗れません
 ポケットの種をつかみ取り、土へ投げつけます
 5センチほど埋まって芽が出てきて、葉が生え、
 百合が咲き、体を持った土はバスを降りました
 私は空いた席に育ちきらなかった芽を座らせ、隣で
 つり革をつかんで、
 「お庭でおろして」
 と運転手に伝えました
 
 お庭へ着くとバスは溶けます
 瞬く間にマリーゴールドに侵食されてお庭へ
 首の運転手には向日葵を植えました
 太陽を向く一輪の向日葵は黄色いマリーゴールドと
 私には見分けがつかないけれど、うまく馴染めたみた
 いで安心した
 
 次はどこのお庭へ行こうかしら
 壊れたタクシー用の首を掘り起こしながら考えます
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 この舞台で君と
 氷葉栖 奏
 
 直線を引いて
 
 直線の一部、
 スポットライトが当たったように明るくなっている
 
 そこが
 この現世での生
 
 墨を指に付けて
 つーーっと直線を描きはじめたらそれが受精で生の
 はじまり
 
 墨はどこまでも続いていく
 
 ただ、スポットライトは一点のみ照らしている
 伸びる直線はだんだんと光が当たらなくなっていき、
 そして墨の直線は舞台外へ
 
 一度退場するともう光に当たりに行くことはできな
 くて、
 それで生は終わって死ぬ
 
 
 線は光に当たらなくなった
 もう私たちには光を当てることはできない
 
 だけど墨で描いた線は決して消えはしない
 
 私は知っている
 
 その線がどんなに力強かったか
 その線がいかに真っすぐであったか
 
 はじめは好みの線ではなかったとしても
 いつしかその乾き光沢のある黒に
 潤いを見出していたのだ
 
 線自体が後戻りして舞台に顔を出すことはもうない
 のだろう
 
 だけれど、私は
 そのステージに立っていた君を
 何度も何度も喚び起こして
 
 その日々とその舞台、
 会場を離れることはできない
 
 これからはスポットライトの当たらない舞台裏で
 小道具なんかを準備して出してくれる君に
 ステージで感謝を伝えたい
 なんてできないけれど
 
 
 
 僕は今、
 異なる墨で描かれた錯走する直線の中で
 同じ一つのスポットライトを浴びて
 踊っている
 
 僕が今どこで踊っていて
 どのくらいの光を浴びていて
 あとどのくらいの間舞台の上にいられるのか
 こればっかりは誰に訊いても分からない
 
 このステージで
 時たま誰かと手を取り合って
 ダンスして
 また他の人とも
 一緒にタップを踏んで
 
 果てしなく
 
 熱いスポットライトに汗をかき
 たまに陰から水をもらって
 また踊る
 
 ここに用意されたステージで僕は
 足が動かなくなっても、
 前が見えなくなっても、
 
 光が当たっている仲間と
 光の当たっていない仲間との
 助けを借りて、
 
 光の当たる限りこの舞台で
 楽しく踊り続ける
 
 スポットライトが私の直線を照らせなくなるまで!


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