いつも通り──瀬野川理沙失踪事件関連資料

植場



 2018年末に発生した瀬野川理沙失踪事件についての調査は、情報の少なさのため、事件から半年以上が経過した今でも遅々として進展を見せていない。本資料は事件に関連する数少ない情報源である一方、不可解な記述を多く含んでおり、その信頼性には疑いが残る。調査に携わる人員は念のため一読のこと。

*

9月15日 土曜日
 朝起きて風呂場を覗くと、彼女はまだそこにいた。
 昨晩の出来事はすべて夢だったのではないか? 浴槽に沈んだ彼女の体を目の当たりにしてもなお、現実を受け止めきれないでいる。長らく怠っていた日記を再び書き始めたのも、混乱した脳内を整理する意味合いが強い。考えをまとめなければ。今、確かなことは。
 彼女は死んでいる。出会ったときから、死んでいた。

 海岸に足を向けたことに理由はなかった。大学の図書館に遅くまで残っていて、駅を出た頃には日はすっかり落ちていた。ふと、夜の砂浜を歩くという考えが頭に浮かび、それをとても魅力的に感じた私は、明日が休日であることをいいことに砂浜に向かった。
 砂浜を見渡して、人影が無いことを確かめたとき。
 最初に目に入ったときは、流木だと思った。
 海を見ながら砂浜を歩いていて、爪先に柔らかい感触がぶつかってから、私は間違いに気付いた。よく悲鳴を上げなかったものだ、と思う。足下に目を向けた私が見たものは、砂浜に投げ出された人間の体だった。
 私は、後ずさることもできずに硬直した。ひと。死んでいる。通報。110番。そんな言葉を脳内でぐるぐる回しながら、濡れた黒髪で半ば隠れた顔を見つめていた。
 でも。しかし。最終的に。
 それが人間の死体であること以上に、一糸まとわぬ少女の肉体であるという事実の方が、私にとって重要になっていった。
 白く滑らかな肌には傷ひとつなく、暴力や事故を想起させる痛ましさは無かった。自殺、だったのだろう。どこかで身投げした少女の体が、海流によってここまで運ばれてきたのだ。十代前半であろうこの少女が、どうして死を選ぶに至ったのか。彼女は何者で、どこから来たのか。
 ──どうでもいい、とさえ思えた。
 恐る恐る屈みこんで、顔を隠す前髪を払い除けると、薄く開かれた双眸が露わになる。光の無い瞳は何をも映しておらず、やはり彼女は死んでいるのだ、そう私に再認識させる。でも、それ以上に、
 「きれいだ」
 そう呟いてしまうほどに、彼女は美しかった。
 水死体のおぞましいイメージに反して、というレベルではない。均整の取れた顔立ち。豊かな長髪。黒々とした深い瞳。華奢で細身の体躯。血の気を失った皮膚も、人形のような、という印象を強くした。何より。
 その唇が、薄い笑みを湛えているように──私には見えた。

 それからは、どうしたんだったか。
 彼女を人目の付かない場所に移してから帰った?
 深夜を待って、スーツケースを持って砂浜に戻った?
 なんで私はこんなことを
 方法はどうでもいい。今、彼女は私の部屋の風呂場にいる。それがすべてだ。
 頬を撫でた柔らかな感触も、張りのある伸びやかな四肢も、死んでいるという以外は生きているかのように、瑞々しい皮膚の質感を保っている。
 それでも彼女は死体だ。いくら肌寒い時期とはいえ、腐敗を止めることはできないだろう。遠からず、彼女の処理について考えなければならない。だが、それまでは。
 浴槽に全裸で身を横たえる彼女がなんだか哀れに見えて、とりあえず私の服を着せた。サイズの合う服を買ってくる必要があるだろうか。

9月16日 日曜日
 部屋に彼女がいることを考えると、何も手につかない。独り暮らしをしていてよかった。独り暮らしを始めなければ、そもそも彼女と出会わなかったのだが。結局、この土日は彼女の観察に費やしてしまった。
 相変わらず美しい。しかし、頬を撫でると少し皮膚が乾燥しているように感じた。やはり劣化は避けられないようだが、ここまで速いものだろうか。試しに彼女の手を桶に溜めた水に浸してみると、肌に艶が戻ったような気がした。気休めにしかならないだろう。彼女の美しさが失われるのは、想像以上に早いかもしれない。

9月17日 月曜日
 かなり迷ったが、大学には行くことにした。今のところ騒ぎになっているような様子はない。やはり、彼女はどこか遠い場所で海に身を投げ、ここまで流されてきたのだろう。彼女の名が知りたいと思って行方不明者情報を調べたが、それらしい情報は見つからない。死後あまり経っていないようだし、まだ捜索願が出されていないのかもしれない。
 大学の帰りに霧吹きを買ってきて、彼女の体に吹きかけてみた。水分を与えれば、一時的にだが乾燥は止められるようだ。ただ、ひとつ気になったことがある。髪に水を吹きかけたときにも、髪が潤いを取り戻したのだ。パサついていた髪が、元のサラサラと指のよく通る美しい髪に。水分を吸うだけで、このようなことが起きるものだろうか。

9月19日 水曜日
 今朝、彼女の乾燥が尋常でないほどに進行していた。このままでは干物のようになってしまうのではないか。不安に駆られて、昨日思いつきはしたが試しはしなかったことを実行に移した。彼女を一度浴槽から出し、水を一杯に溜めた後、彼女を浴槽に戻す。出会ったときの彼女が、半ば海水に漬かっていたように。
 諦め半分だったが、これが正解だったようだ。彼女を浴槽の中に座らせると、みるみる体に潤いが戻っていく。水に浸かっていない部分までも。美しさを取り戻す彼女を見て、私は確信した。
 彼女は、ただの死体ではない。
 あるいは、死体ですらなく──そういう存在なのかもしれない。だいいち、死後硬直や死斑が一切無い。状態としては死蝋化が最も近いものの、彼女の体は肉の柔らかさを保っている。ネットで調べただけの知識だが、それでも分かる。このような死体は、あり得ない。
 これは私にとってはむしろ喜ばしい事態だ。腐敗しないどころか、美しさが失われることさえないかもしれない。更なる観察が必要だ。

 大学から帰ってくると、浴槽の水が濁っていた。顔を近づけるとやや磯臭い。水を新しいものに交換した。体内に残っていた海水が出てきたのか? あるいは──これは、代謝なのか?
 ともあれ、こうなると彼女に服を着せている訳にはいかない。服を脱がせるとき、図らずも胸の高鳴りを覚えた。露わになった彼女の裸体は白く、一点の汚れもない。肌に触れると、死んでいるとは到底思えない柔らかな瑞々しさが、私の指先に確かな弾力を伝えた。
 ちらりと彼女の顔を見ると、彼女はやはり、出会ったときと同じように、微笑んでいた。女神めいた微笑は、これまでの私の行いのすべてと、これから私が行うことすべてを、許してくれるかのようだった。

9月21日 金曜日
 彼女と出会ってから早くも1週間が過ぎた。空き時間のほとんどを観察に充てているが、進展は無い。観察と言いつつ、彼女の肢体や微笑に見惚れる時間がほとんどだ。とはいえ、私がやるべきことは確立されたと言っていいだろう。浴槽の水を毎晩交換する。これだけだ。
 やはりこれは代謝なのではないだろうか? 彼女は綺麗な水を吸収し、入れ替わりに汚れた水を排出することで、肉体の新鮮さを保っているように見える。人間の死体にそんな機能は無い。する意味が無い。では、この人間の死体にしか見えない彼女は何者なのか。
 気にはかかるが、私は学者ではない。彼女に魅入られただけの一般人だ。もし彼女が尋常な人間でないというのなら、それは私にとって好都合だというだけだ。彼女を探している家族がいないのなら、彼女が、そして彼女をアパートの部屋の風呂場に隠している私が見つかることもない。私は安心して、彼女の美しさを享受していればいいのだ。

9月23日 日曜日
 一昨日はああ書いたが、考え直してみると、自分があまりに異常な事態の中にいることに気が付いた。彼女の性質が異常だと言いたい訳ではない。
 都合が良すぎる。
 人間の死体の形をしたなにか。新鮮な水を吸って濁った水を吐き出す。乾燥しない。腐敗もしない。美しさを半永久的に保つ。人間ではないから、それを探す遺族や警察機関も存在しない。
 まるで、何かの理由があって人間の死体を家に保管しなければならなくなった人間の、「もしこうだったらいいのにな」が具現化したようではないか。

 私は私の正気を証明するために今これを書いている。
 つまり、私は見ず知らずの少女を殺めたのではないし、その死体を風呂場に隠してもいないし、死体を処理する方法を思いつかずに追い詰められていないし、挙句に発狂して都合の良い妄想に取り憑かれているのでもないということを。
 この日記が証明してくれる。私は正常だ。
 砂浜に落ちてる死体を持ち帰って愛でる人間のどこが正常なんだ?
 書き終わったら、寝る前に彼女に会いに行こう。きっと彼女は、いつも通りに死んでくれているに違いない。

9月24日 月曜日
 目覚めると既に昼だった。大学は休んだ。
 昨晩の私がしたことについて、この日記に詳しく書く気はない。自分は頭のおかしくなった犯罪者なのではないか。そんな考えに取り憑かれて、急に周囲のすべてが信じられなくなった。私にまともな人間関係が残っていたなら、家族とか友人との触れ合いが私の正気を担保してくれたかもしれない。だが、最後に他者と会話したのがいつだったか思い出せない私にとって、自分の正気を証明してくれるのは、彼女しかいなかった。
 浴槽の中の彼女は、あまりにいつも通りだった。
 いつも通りに美しく、いつも通りに微笑んで、いつも通りに死んでいた。
 人間の死体がこんなに美しく微笑む筈がない。
 私は正常だ。そう思った。

 彼女の顔をよく見たいと思って、浴槽の傍に跪いた。顎に手を添えて引き寄せると、彼女は容易く私に顔を向けてくれる。長い黒髪が揺れて、風呂場の小窓から差す月明りが、彼女のツンと高い鼻を滑った。仄かに赤味の差した小さな唇が弧を描く。笑っている。
 いつも通りの微笑。違うところがあるとすれば。
 薄く開かれた瞼の奥の瞳は、確かに。
 私を見ていた。
 見つめ合う恋人のようだ、私はそう思って──
 見つめ合った恋人が次にするであろうことをした。

 気付いたときにはすべては終わっていて、私は浴槽の中で彼女に覆い被さっていた。自分自身の荒げた息遣いと、寄せ返す波のちゃぷちゃぷという音に現実に引き戻され、私は抱き寄せていた彼女の体を離した。ひんやりとした彼女と密着していたせいか、私の体も冷たくなっていた。しばらくすると体の表面に体温が戻っていくのを感じ、なんだかとても寂しくなった。
 彼女は私の舌を受け容れるために口を薄く開けていたが、それ以外はまったくいつも通りだった。下半身の甘い痺れにも構わずに私は立ち上がり、後処理を始めた。彼女を浴槽から出し、その肉体を丁寧に洗い清める。口元と性器周辺は、特に丹念にしなければならなかった。
 ラブドールの掃除も、きっとこんな感じなのだろう。そんな下卑た考えとは裏腹に、私は取り上げた赤ん坊を産湯に漬ける産婆のような満ち足りた気持ちで、彼女を浴槽に戻した。分かっている。私がしたことは恋人同士の営みでも、性行為でもない。単なる自慰だ。
 それでも私は、初めてそれをし終わった恋人たちがきっとそう思うのと同じように、
 幸せだ、と──思った。
 名残惜しかったが、火照った体が急速に冷えていくのに気が付いて、急いで体を拭いて着替えた。疲れていたのだろうか、居間に戻るなり布団に潜りこんで、そのまま寝てしまったらしい。今度から、浴槽にはぬるま湯を入れることにしよう。

9月28日 金曜日
 死姦。私の行いはそう呼ばれるのだろう。いくつかの常識に反する性質を除けば、彼女は完全に少女の亡骸だ。私自身、自分が物言わぬ少女の肉体に欲情していることに驚いていたし、罪悪感を抱いてもいた。
 過去形だ。
 もしその気持ちが残っているのなら、何度も同じことを繰り返したりしない。
 自分の手と比べて特別気持ちがいい訳ではない。むしろ、普通にした方が快感は強いように思う。であればなぜ、私はこうも彼女との交わりを望んでしまうのだろうか。
 私は、もはや。
 あれを自慰行為だとは考えていないのだろう。
 また大学を休んだ。
 私は正常だ。
 今まさに、狂っていっているのかもしれない。

10月5日 金曜日
 彼女を浴槽から出してあげられないのが残念だ。
 色々と試したが、やはり水に漬けている以外に乾燥を止める方法はない。彼女が浴槽に一人ぽつんと過ごしていると思うとどうにも可哀そうで、1日の大半を風呂場で過ごすようになった。
 彼女が生きていれば──とは、不思議と思わない。話しかけても、顔を覗き込んでも、体を重ねている最中にも。彼女は何を言うこともなく、いつも通りに微笑んでいるだけ。
 それでいい、と思った。心を、体を、生活を、彼女の微笑に支配される感覚が心地よかった。

10月13日 土曜日
 彼女と口づけをしていると、インターフォンの音が聞こえた。もう数か月も聞いていない音だったので肝が冷えた。玄関から数歩進んで左に曲がるとすぐに風呂場があるため、扉を閉めていても音はよく届く。何度か同じ音が鳴り、諦めたかと思って彼女に向き直ると、今度は大声で私に呼びかける声が聞こえた。
 初めは誰だか判らなかったその声は、どうやら同じゼミの学生らしかった。
 内容はよく聞こえなかったが、おそらくは、大学に顔を出さなくなった私を心配して様子を見に来た、のだろう。住所を教えたことがあっただろうか。ゼミの教授から聞いたのか。名前すらあまり覚えていない連中だ。
 そんな人たちが、よく知りもしない私のことを、心配してくれているのか。

 声が止むのを待って、再び彼女と唇を重ねた。
 小さな肩を抱きしめる手に、いやに力が籠った。
 昨日だったら。先週だったら。先月だったら。
 彼女と出会う前に、その声をかけてくれていたら。
 もう遅い。

10月24日 水曜日
 水を抜いていると、排水口からごぼごぼと音がする。何も不思議ではない。
 彼女を浴槽から出して、濁った水を排水する。彼女を眺めながら、ごぼごぼという音を聞く。音がしなくなったら排水完了の合図。ぬるま湯を浴槽に注ぎ、彼女の体を浴槽に横たえる。この作業は私の日課となっていた。
 今日も風呂桶に腰掛けて、彼女の微笑に見惚れていた。ここまではいつも通り。だが。
 ごぼごぼという音が、いつまでたっても終わらない。
 ふと気が付いてスマホで時間を確認すると、排水し始めてから7分が経とうとしていた。首を傾げながら浴槽に目をやると、排水はもう終わっていた。音が鳴る訳はない。
 じゃあ、今も鳴り続けているこの音は、どこから?
 風呂場を見渡した私は、──確かに聞いた。
 壁にもたれかかって、私に微笑を向けている彼女。
 その、薄く微笑んだ唇の、僅かな隙間から、確かに、
 
 ごぼごぼごぼごぼごぼごぼごぼ
 
 排水のそれに似た水音が、微かに響いていた。

 私はそっと彼女の顎に手をやり、口を閉じ直してあげた。そうすると、音は途絶えた。
 後は、いつも通り。日課を終えて、私は風呂場を出て行った。
 腕の鳥肌は、寒さのせいではなかった筈だ。

11月1日 木曜日
 水死体は水分を吸って膨張するらしい。
 だが、今さら?
11月9日 金曜日
[判読不明な殴り書きが数行続く]
 あり得ない。
 何度も自分の目を疑った。
 まさか。本当に?

11月24日 土曜日
 結論から言うと。
 彼女は妊娠した。

 初めは、腹部が少し膨らんでいる気がする、という程度だった。そのときは見間違いだと思ってすぐに忘れた。しかし、お腹の膨らみは徐々に無視できないほどになっていった。その速度は明らかに異常だ。人間の妊婦で言えば、既に妊娠中期から後期くらいの大きさになっている。
 このまま放っておけば、来月中旬くらいには、産まれる。
 何が?
 生きた人間からは生きた赤ん坊が産まれる。
 じゃあ、死んだ人間からは? 何が産まれるというのだろう。
 いや、彼女は人間ですらない。死んだ少女のような形をしたなにかだ。
 なおさら──何が起こるのか、分からない。
 産まれてくる子は、人の形をしているだろうか。
 いつも通り、彼女は美しく笑っている。
 私は彼女と出会ってから初めて、その美しさを、
 心底から悍ましいと思った。

11月25日 日曜日
 丸一日、どうするべきか考えた。答えは出ない。
 日記のページを必死に捲った。答えは出ない。
 彼女にどうすればよいか問い掛けた。
 彼女は美しく微笑んでいた。
 答えは出ない。

 なぜ。なぜ。なぜ。なぜ。
 とっくの昔に抱いているべきだった疑問が、今さら私の心を埋め尽くした。

 だって、彼女は死んでいるのに。
 だって、彼女は人間じゃないのに。
 なにより。
 
 だって、私は、女なのに。
12月3日 月曜日
 貝合わせという言葉くらいは知っていた。
 それで人間は妊娠しないということも。
 人間は。

 彼女のお腹は、いつ破水してもおかしくないほどに膨れ上がっている。破水という過程があるのなら、だが。
 しばらく考えたが、私にできることはこれしかない。
 風呂場に椅子と日記帳と筆記用具を持ち込む。
 彼女の微笑を見つめる。一日中、そうしている。
 何も起こらなかったらまた明日。水の交換と、自分の食事やら入浴やらを済ませて、風呂場に置いた椅子に腰かけて寝る。
 
 逃げようかとも思った。いっそ私も海に身を投げようかとも考えた。
 そんなことをしても無駄だという確信があった。
 彼女は、浴槽の中に居ながらにして、決して私を逃がさないだろう。そんな確信が。
 だから私は、いつも通りにするしかできない。
 いつも通り彼女の傍にいて、
 いつも通り彼女の顔に見惚れる。
 彼女も、いつも通り、美しい微笑みを浮かべて、
12月18日 火曜日
 ちがった

*

 以上の文章は、瀬野川理沙が書いたと思しき日記からの抜粋である。この日記帳は彼女が居住していたアパートの風呂場に落ちていたのを回収されている。
 浴槽の中には身元不明の死体が存在した。十代前半の女性のものと見られるが、腐敗が極めて激しく、また衣服や所持品等も発見されなかったため、身元および死因の同定は難航している。この死体と瀬野川理沙の失踪の関連性についても調査中である。
 なお、浴槽内に溜まっていた液体については、血液と羊水の混合物であることが判明した。DNA鑑定の結果、これらの体液に含まれるDNAは前述の死体のものと合致した。
 日記の記述を信じるなら、瀬野川理沙は12月18日まではこのアパートに滞在していた。しかし、彼女は所属する大学に久しく登校しておらず、地域での人間関係も皆無に等しかったため、目撃証言が乏しく、失踪した具体的な日時は判然としない。調査の進展が待たれる。


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