隣のシヴァは青い

あいかわあいか


隣のシヴァは青い
あいかわあいか

【開端】
 「Call Me Maya(わたしを「マヤ」と読んでもらおう)」なんて恰好をつけてみたところで意味はない。なぜならこの日常ギャグ小説の主人公という茨の冠は、わたしこと平々凡々の象徴者、普通人マヤさんにではなく、わが旧友に。一線を越境した天才少女、月子ちゃんにこそ帰せられているからである。

【登場人物紹介】
〔月子〕
 他者の追随を許さない圧倒的な、描画力・空間把握力・映像記憶力・語学力を有する黒髪のクール系天才美少女! なんでも覚えてなんでも表現できる。しかし、それ以外はまるで何もできないので、生活能力は皆無壊滅。いつも摩耶に助けられている。摩耶と下宿の一室をルームシェアしている。

〔摩耶〕
 平々凡々を象徴する一線のこちら側の常識人、クラスで三番目くらいにかわいい(自称)。真面目系クズのサブカル腹黒少女。何のために役立つのかわからない特技をたくさん持っている。斜に構えているが、根はやさしい。けど性格はお世辞にもよくない。本作の語り部。

〔如月 雪〕
 黒髪の先端を赤色のメッシュに染め、スクランパーとかヴァンパイアとかのピアスを楽しむ今どきの女子。月子と摩耶の後輩。鉄面皮でコメントは辛口。普段はいつも眠そうにしているか眠っているが、夜になるにつれ元気になる吸血鬼系少女。見た目通り人外。

【目次】
       第一話 三毒食わば沙羅まで(第貪話改)
       第二話 隣のシヴァは青い

【第一話 三毒食わば沙羅まで(第貪話改)】
 わたしの旧友は、三月ウサギみたいに気が狂っている。

 土曜日の昼下がり。わたしは学食でカレーうどんのぼっち飯を終え、足早にボランティア部の部室を目指していた。イチョウ並木の下に広がる黄色の絨毯を踏み、そしてごろごろ転がる銀杏くんたちを回避していく。どうやら世の中は秋らしい。中高一貫校だからあんまり自覚はないけれど、わたしが高校生になってから既に半年がすぎてしまったようだ。まだメンタルは小学五年生だというのに、身体ばかり老いていくのは世界の不思議である。
 さて、ようやく部室棟にたどり着たわたしは、「ボランティア部」のプレートのかかった引き戸に手をかける。ガラリと戸を開けると、わたし以外のまじめな部員たちは既に全員が集まっていた。――とはいえ、弱小ボランティア部の部員はわたしを含めてたったの三人だけしかいない。
 一人目は、わたしの旧友にして悪友の月子ちゃん。窓際の丸椅子に絵筆片手。「うーん」と頭を掻きながら、カンヴァスへと大胆に油絵具を落としていた。わたしと彼女とは、三歳の頃から続く、食べられないほどに腐った縁になる。
 二人目は後輩の雪ちゃん。彼女はというと炬燵の中で丸くなり、お昼寝に勤しんでいた。どうして炬燵の中にいる雪ちゃんの存在がわかるのか? それは、彼女が潜り込んだ炬燵から、赤いインナーカラーの入った長髪と、スマホ充電ケーブルの引込線が畳の床に姿を見せているからである。わたしはこたつむりと化した後輩の眠りを妨げないよう、引込線の反対側から炬燵に足を入れた。さて、あったか炬燵には饅頭よりも蜜柑がこわい。竹細工の籠のみかん山に手を伸ばし、丁寧に薄皮まで剥いては口に放り込んでいく。その後に麦茶を飲んだら苦かった。
 もちんわたしこと摩耶さんも、ボランティア部三羽烏の一翼を担っている。加えて、なぜか部長という仕事もさせられている。これは、三人の中で相対的に常識と良識があり、比較的性格がマシだったからだろう。顧問教諭の若い兄ちゃん――溝口先生の胃壁の無事が非常に心配である。
 さて、四回生(高校一年生)のわたしと月子ちゃん、三回生の雪ちゃんによって構成されるボランティア部。聞くところによると、崇高な理念を持って創設されたらしく、また由緒もあるらしい。とはいえ、断言しよう。この三人は誰一人としてボランティアという名にふさわしいような勤労奉仕の精神なんてものを、毫も持っていない。この「ない」という言葉の意味は吹奏楽部の連中が「えーテスト勉強なんて全然していないよ~」と言うときの謙遜や卑下の意味ではなく、留年の危機を迎えた月子ちゃんが「どうしようテスト勉強してない」ってわたしに泣きついてくるときの「ない」である。つまり、本当にわたしたちは人のためにする心を持っていないのだ。日本社会の将来が非常に心配される。
 真面目系クズを公言して已まないわたしは、ドヤ顔で履歴書とかに『ボランティア部・部長』と書き込むためだけに廃部寸前のこの部に入った。月子ちゃんはわけあって美術部を追放されたところをわたしに誘われて入部し、狭い部室を油絵具とシンナーの臭気で満たしている。雪ちゃんに至っては炬燵で寝るためだけにこの部に入った。
 部活棟の公用ボードには「なんでも依頼引き受けます」と、探偵屋のごとき看板を引っ提げているが、伊達も酔狂もいないこの世の中、依頼なんてくるはずがない。だから現実のボランティア部は、わたし一人が教育委員会《おかみ》から降ってくる下請け業務をやらされているだけである。おかしい! ボランティア部の部長になって、仕事を全部部下たちに割り振ってわたしはいっさい仕事をせずに「摩耶ちゃんえらい!」「ありがとう!」って他人の手柄で褒められることを何よりも夢見てこの部活やってるのに、どういうわけかわたしのワンオペ労働だ。

「よーし完成! ねえねえ見てみて、マヤちゃん~」
 そんな阿房なことを炬燵の中でくどくど考えているうちに、月子ちゃんのおえかきが完成したらしい。彼女は絵筆をカタンと置くと、わたしをくいくいと手招きした。彼女のブレザーは成長期を予見して大きめのサイズを買ったのに、高校生になっても全然成長しなかったせいでぶかぶかの萌え袖状態になっている。しかも不器用なんだから、あちこちに絵具がこべりついていて、特に袖口なんかは何層にも重なってぱりぱりになっているのだ。その何色とも形容しがたいよごれは圧巻の一言で、品格とか口うるさく言う教師たちであっても彼女にかける言葉はない。まあかわいいからよしだ。
 わたしは「ん」、と軽く返事をして、月子ちゃんのカンヴァスを覗き込んだ。その中には、油絵のできたてほやほや、ベッドで優美に微笑む全裸のわたしの姿があった。
「なるほど。............タイトルは裸のマヤかな?」
「うん! 着衣のマヤもあるよー」
 そう言って月子ちゃんは後ろの棚に、頭隠して尻隠さず状態で(つまり隠しているけどほとんど見える状態で)カンヴァスを取り出した。どうやら乾燥させている途中らしい。部室に入った時から、ちらっと気になってはいたけど敢えて追及してやらなかったやつだった。内容はさっきの「裸のマヤ」のスケスケベビードール差分「着衣のマヤ」。わたしは暫く黙って。
「ねえ月子ちゃん」
「うん」
「発禁」
「えー」
「わたし、一六歳だから事実上の児童ポルノだよ。ほらちゃんと海苔修正入れて」
「昨日の晩に思いついたから頑張って描いたのに」
「この寒いダジャレのために?」
「ふふん、月子さんの完全映像記憶を舐めてはいけない。一度でも見た情報は完全に記憶されるのだー。記憶をもとに描いたから、人体比例は完璧だし、なんならちょっとお腹の肉が気になってるって前に言ってたから、いい具合に盛っておいたよ」
「え、まさかふっくら?」
「もちろん減量する方向で」
「ちょっと嬉しいけど素直に喜べない気遣いありがとう。......ちなみにいつ見たの?」
「この前お風呂行ったときに」
「はぁ、そういやなんか凝視してたね。十数年来の付き合いじゃなきゃバアル掴んで殴り掛かってたよ」
 はぁ、とわたしはため息一つ。月子ちゃんはただ単に良識とか常識とかそういったものが絶望的に欠損しているだけで、悪意はないということを十年来のつきあいで知っているから怒る気にはなれない。まあそのせいで月子ちゃんは美術部を追い出されたんだけど。
「............ねえ、月子ちゃん」
「んにゃ?」
「神戸の冬にベッドで全裸は寒いから服着せてあげて。あとできれば超高級羽毛布団も」
「あいあいさー」
 彼女はそう返事すると、またパレットと絵筆を手に取り、カンヴァスにぺたぺたと絵の具を上から塗り重ね始めた。月子ちゃんは基本ぼけっとしてだらしない表情をしているが、絵を描く時だけは真剣でかっこいい表情をする。わたしは徒然だったので、彼女にだる絡みしてやることにした。
「......そういや月子ちゃん、今日はおひる何食べた?」
「部室でござそーろーの赤いやつ。マヤちゃんは?」
「カレーうどんが食べたくなったから学食で」
「その割にはブレザーにつゆ跳ねてないね」
「ふふん、実はカレーうどんを食べる時につゆを跳ねさせずに食べるのが、わたしの四八ある特技のうちの一つなのだよ」
「前にも聞いたよそれ。地味にすごいけど、やっぱり反応に困る」
「月子ちゃん箸使うの苦手だもんね。筆や鉛筆を持てば自由自在なのに」
「うーん。なにがいかんのだろうねぇ」
「まあ人によって得意なことは違うものだよ」
「マヤちゃんは他にどんな特技あるの?」
「たとえば会話の流れを断ち切ることかな」
「うーん............閑話休題」
「本当に断ち切らないでよ!」
 わたしは雑談を続けながら、月子ちゃんの横顔をちらりと覗き見た。クールな面持ち、絹のように白く滑らかな肌、艶のある黒髪。その上、見たものを映像として記憶して忘れない能力や、ほんの数週間で新しい言語を覚える能力、どんなものでもイラストでさくっと表現してしまう描画能力を持っている。何もできなくって、コミュ障で、性格の悪いわたしとじゃ大違いだ。――ああ、月子ちゃんがバカでよかったな、そのおかげで嫌われずに一緒にいられるもん。わたしは真剣にカンヴァスを見つめる彼女の姿を、ぼんやりと眺めていた。
「ねえ、マヤちゃん」
「どうしたの?」
 視線が気になったのか、月子ちゃんはくすぐったそうに目を細めた。わたしは彼女が生活能力皆無なのを知っている。箸も持てないし、料理も炊事も洗濯もできないし、お風呂にも一人で入れない。わたしがいないといつも猫のように日向で丸くなっている。そんなダメダメな月子ちゃんだとしても、見た目はクールビューティーそのものなのだから視線を向けられるとどきっとする。別に恋とかはしないけど。
「わたしたち、きっと、絶対に、一生友達だろうね」
「どうして?」
「だって、わたしもマヤちゃんも友達作れないから」
「月子ちゃん。......唐突に真理つくのやめて」
「なんか、学食で一人で猫背で、スマホとか触りながらカレーうどん啜ってるマヤちゃんの姿を想像すると悲しくなっちゃって............」
「それ以上いけない!」
 そうこう言っているうちに気がつけば絵画の修正が終わっていた。堂々の一八禁ヌードは一五歳以上奨励くらいの微妙にボディーラインの見える程度の健全な絵画に生まれ変わった。ミケランジェロの『最後の審判』に腰布を書き加えたダニエレ・ダ・ヴォルテッラのごとき仕事ぶりである。月子ちゃんは一息ついて汗を拭った。そしてカタンと筆を置くと「うーん」と猫のように身体を伸ばす。――これが毎日つづく月子ちゃんとのやる気のない日常だった。

 秋の日はつるべ落とし、とはよく言ったもので、ふと気づくとだいぶ日が傾いている。時計の針は夕方の四時を指していた。きょうもきのうと同じように、月子ちゃんと有意義に時間を潰していると、背後からごそりと物音が響く。どうやら後輩の雪ちゃんが寝返りをうったようである。炬燵から出ていたはずの赤いインナーカラーの長髪が中へと消えていた。それからしばらくして、炬燵の中から顔だけ出して、上目遣いで、目を擦りながら眠そうにこちらを見上げた。
「あー、先輩。おはようございます。ああ、早起きしちゃいました。ふぁあ、ねむ」
「夕方の四時だよ?」
「わたし九時五時睡眠なんで」
「九時から五時は勤務しようよ。ホワイトな時間だよ」
「そういう体質なんで」
 そう言って雪ちゃんは、吸血鬼の牙みたいにスクランパーをちらりと覗かせて笑った。彼女は校則なんてガン無視して、光を吸い込むかのような漆黒の髪を長く伸ばし、その内側を赤のインナーカラーで染めている(どうやらそれが地毛らしいので、遺伝子組み換え毛根ということになる。未来を先取りした技術だ)。その上、ピアスも耳にいくつかと、あとスクランパーとヴァンパイアと......まあ色々と楽しんでいる。
 わたしは、メンヘラ・サブカル・陰キャという三重苦を抱える地雷系女子高生してるくせに、リスカとかピアスとかそういう痛そうなのはちょっと想像するだけで心臓がぞわぞわする臆病者だ。だから雪ちゃんのピアスを見ると凄いな、かっこいいなってなる。服選びも中々に卓越していて、私服通学オーケーをいいことに、シックなロリータ衣装を恥ずかしげもなく纏い(もちろん超似合ってる)、デニールの低い白タイツと合せている。しかもきちんと可愛いのだから世の中不平等である。
 一年くらい前の雪ちゃんはちゃんとブレザーを(当然のことながら油絵具をつけないで)着る優等生だったはずなんだけれど、ある日を境に髪の毛を染めて、ピアスをあけて、服とかも吹っ切れた。当時は中々に面食らったが、陰鬱優等生だった少女が、その日を境にだんだんと辛辣で生意気な優等生になっていったのだから、まあ悪い変化ではないと思う。それに、ロリータとボディピの趣味は結構前からその端緒が見えていたし。
「あーそうだ、先輩。見てくださいよ、これ」
 そう彼女は言って、自らの胸元を軽くはだけさせた。左右対称に二列のピアスリングが縦に並び、そのリングを漆黒のリボンが交差してコルセットのようになり、肌を飾り付けてあった。雪ちゃんはふふん、とドヤ顔で。
「今日は彼氏とデートなんで頑張っちゃいました。中々にかわいいでしょう?」
「雪ちゃん、コルピかっこいいね」
「でしょでしょ。流石は月子先輩、わかってますね。褒めてもらえて嬉しいので、何か夕食奢ってあげますよ。ついでに摩耶先輩もどうぞ。昨日の客が随分と奮発してくれたので」
「後輩に奢られるのは面目が立たない気がするぞ」
「いいじゃありませんか。ほら、社会人でも馬券当てた後輩が奢ったりするでしょ。あ、先輩は競馬とか行きませんか」
「雪ちゃん、君ほんとに中学校三年生だよね?」
「よく色々な人と一緒に行くんで。おじさん相手なら、馬詳しいと気軽に打ち解けれること多いんですよね」
「そんなもの?」
「ええ。おじさんが『きみみたいな若い子はyuotebuとか毎日見るんでしょ? ムカキンとかそんな?』と尋ねて、わたしが『パチスロチャンネルとか、帝国競馬チャンネルとか』って会話すればもうイチコロです。いや中年の冴えないおじさんって決まって車と競馬とパチンコの話しかしないですよ。くくく。何が面白いんだか」
「ずいぶん楽しそうに語るね」
「だって豚のふれあいコーナーに通えばお金貰えるみたいなもんですよ。豚が真珠抱えてくるんですよ。笑っちゃいますよね」
「うわ傾国」
「あ、勿論冗談ですよ」
「えっと、どのあたりから?」
「先輩に奢るというところから」
「そこは冗談にしちゃ駄目なところだよ!?」
「冗談の冗談です。月子先輩は夕餉に何が食べたいですか?」
 月子ちゃんは「うーん」と空を見つめる。やがて、「あそうだ」といった表情になった。
「おなかすいたから、とんこつラーメンたべたい」
「うーん、とんこつラーメンの擬人化みたいなおじさんから貰ったお金を使ってとんこつラーメン食べるのはちょっと......何かほかにありません?」
「なあ月子ちゃん。いい機会だ、折角だし高いものをおごってもらおう」
「流石は摩耶先輩、人間腐ってますね」
「誉め言葉かな?」
「うわ酷い......。でも先輩の図々しさは見習いたいです」
「けどね、わたし思うんだ。自分の金で食べる焼肉より、人の金で食べる焼肉のほうが五万兆倍くらいおいしいって」
「クズ。けど気持ちわかりますよ。焼肉でいいですか?」
「ううん。花の女子高生だからやっぱり満漢全席」
「わかりました。今夜はみんなで中華お粥にしましょう。先輩には特別にわたしのパクチー全部あげますよ」
「ひどい!」

【第二話 隣のシヴァは青い】

       Ⅰ
       
 如月雪は冷酷な女だ。血も涙もない。サイコパスだ。勿論、ともだちだって作れない。あいつは孤独に生き、孤独に死んでいくのだろう――――。
「......負けました」
「ありがとうございました」
 わたしは静かに投了を宣言した。暖房のないボランティア部はめちゃくちゃに寒いので、白い息が出た。対して、懐中より取り出したる漆黒の扇子(なんか黒い謎粒子を出しているが気にしない)をぱたぱたさせる雪ちゃんは莞爾とお辞儀をした。
「ねえ、雪ちゃん」
「はい」
「友達なくすよ」
「そうですね。超わかります」
 将棋は二人零和有限確定完全情報ゲームの一種であり、日本だと多分それなりにメジャーなボドゲだと思われる。多くの人が小さい頃に遊んだことがあるのではなかろうか。どういうわけかこの後輩とわたしは炬燵の上にたびたび将棋盤をひろげる仲にあった。今日も「雪ちゃん」「はい」「将棋やろ」「いいですよ」。という簡潔極まりない会話があって、気楽に対局勝負することになった。そして無事......? まあとりあえず、勝負が終わって今に至る。戦型はわたしが先手で、雪ちゃんが後手。雪ちゃんが四間飛車で銀冠に組むのを見て、わたしが居飛車で銀冠穴熊に組んで、このまま作戦勝ちかと思っていたら、気付いたらわたしから攻める手が一つもなくなって熊の姿焼きにされていた。
 わたしたちがうんうんと頭を悩ませながらCPU使用率を100%にしていたのとは対照に、月子ちゃんは相変わらず頭空っぽのまま、炬燵でぬくぬくしていた。彼女の思考能力では一手詰さえわからないが、わたしたちの表情を肴にみかん(彼女は薄皮が食べれないくせに薄皮を剥けないから、わたしがぜんぶ剥いて皿に並べた)を食べるのはどうやら美味しいらしかった。毎度、終盤でわたしが手に困って苦悶の表情を浮かべているときが一番楽しそうにしている。こんにゃろ見世物じゃねーんだぞ。
 この雪という少女の棋風を一言で言えば「辛い」。具体的にはこの前中華粥を食べたお店の唐辛子がぷかぷか浮かぶ激辛麻婆拉麺並に辛い。雪ちゃんはどれだけ優勢な局面でも、負けないことを何よりも重視した慎重な指し回しをする。とにかく相手の攻める手を受けて、受けて、受け潰して、確実に勝てる展開に持ち込んでからしっかりと勝ち切る。そして、安全に勝つためなら千日手も厭わない。もちろんそれらはルール違反でもマナー違反でもないのだけれど、戦う相手は勝ち筋の見えない戦いを延々と続ける羽目になるので心がゴリゴリと削られていく。何を言いたいのかというと、この後輩はけろりとした表情をして友達をなくすための手を指してくるということだ。彼女の一手一手には「友などいらぬ」と言わんばかりの気迫が込められている。そうか、そうか、つまり君はそんなやつなんだな。
「大丈夫ですよ。摩耶先輩相手のときしか指しません」
「なんだよかった......ってよくない! わたし何か嫌われるようなことしたっけ!?」
「だって摩耶先輩もわたし相手なら結構容赦ない手を指しますよね」
「まあ......うん。だって雪ちゃんも基本辛いし」
「そういうことです」
「うーん」
 まあ確かに思い返してみれば、雪ちゃんが入部したての頃に、よし将棋指そうって対局したのが最初だった。その時はわたしが初心者同然の彼女を右玉で受け潰したんだっけ。なるほど雪ちゃんとしては、それに対する復讐なのかもしれない。いやしかし、わたしは悪くないぞ。雪ちゃんが受け潰しの鬼へと覚醒したのは、あくまでも彼女の性格(もしくは性癖)が原因に他ならない。もしくは日本の産業構造に問題がある。
「ねーマヤちゃん」
「ん?」
「将棋って性格が悪い方が勝つゲームなの?」
「ううん。真剣に考えてる人が勝つゲームだよ」

       Ⅱ
       
 感想戦を終えた頃、ボランティア部室の戸を叩く者がいた。トントンとノック音が響き、ややあってガラリと引き戸を開けて「失礼します」と一人の少女が姿を見せる。雪ちゃんの希少な友達であるという黒髪の中学二年生――たしか名前は下府神楽といった気がする。この少女もわたしと同様に雪ちゃんに振り回される苦労人であるということが、疲労感が染みついた真面目な表情から容易に窺い知れた。
 神楽ちゃんが猿渡はるばるボランティア部の部室を訪ねることになったのは、雪がぐっすり睡眠してサボタージュしていたホームルームの時に配布されたプリントを、彼女の担当教諭から届けるように頼まれたからだった。彼女たちの間で「今度からはちゃんとしてくださいね」「はいはい」という何度目になるのかすらわからない会話が交わされ、神楽ちゃんは鞄の中から一枚の紙を取り出した。
 その刹那、わたしと雪ちゃんは息を飲み、苦虫をかみつぶしたような表情を浮かべて互いを見つめ合わざるを得なかった。プリントには横書きの創英角ポップ体で「進路調査(中)」という忌々しい文句が書かれていた。
 月子ちゃんも覗き込んで首をかしげ「そういえば、わたしたちも出すんだっけ?」と尋ねる。わたしは小さく首肯すると、手提げかばんの中にある大事なものファイルの中から「進路調査(高)」を二枚取り出した。明日〆切だった。神楽ちゃんも自分の「進路調査(中)」をこたつの上に取り出した。――こうして、四枚の白紙の進路調査たちがこたつの上に並べられた。どうにかしてぷ○ぷ○みたいに消えてくれないものだろうか。
 わたしと雪ちゃんには共通点が多い。そのうちの一つは「未来について考えることが嫌い」ということである。未来について考えるというのはまったく無益なことであり、むしろ悪であるというのが二人の共通見解だ。思うに、人間は未来を予測する能力を持って生まれたがゆえに不幸な運命から抜け出せずにいる。わたしたちは自我を持って以来、未来の飢え、未来の痛み、未来の貧乏を恐怖し、その恐怖を和らげるための行動をとらざるを得なくなった。畢竟するに、人間は未来の奴隷である。人間と比較してそこいらの犬畜生や、月子ちゃんを見てほしい。彼ら彼女らには「今の瞬間」という須臾しか存在しないが、果たしてそれは不幸なことなのだろうか。どうにもならない未来についてくよくよ考えるより、今ひとときを楽しく生きるほうがよっぽど幸福なことではないだろうか。といったことをわたしは考えざるを得ない。
 ......えっとつまり何を言いたいのかというと、ガチで将来の夢とか思い浮かばないから進路調査とかマジ勘弁してほしい。というのがこの二人共通の感想になる。いや本当思いつかないんだもん。
「ねーね。マヤちゃん」
「どうしたい?」
「確かマヤちゃんは中三のとき、地方上級って書いて、わたしは芸術家って書いてるよ」
「そうだっけ。毎回心にもないこと書いてるから全然記憶にない。けどでかした! ......今年もそう書いておいて誤魔化してしまおう」
 わたしはさっそく万年筆を使って、進路調査(高)にそれぞれ『地方上級』と『芸術家』と無駄に達筆でしたため、その下の欄に無難そうな国立大学の名前を書き添えておいた。別にわたしは官吏になりたいとは思っていないし、月子ちゃんだって将来についての構想は豪もないだろうから今は適当でいい。どうせ進路調査に何の文字を書いたところで、わたしはわたし自身の将来と月子ちゃんの将来の二人分の人生を設計しなければならないという事実は覆らないのだから。責任重いなぁ。
 ちらりと後輩たちの進路調査票を見てみると、雪ちゃんは白紙のまま石化している一方で、神楽ちゃんの調査票には『技官』と小さな文字で書かれていた。......君本当に中学二年生だよね? まあ、わたしだって中二の頃は進路調査に『局長』ってでかでかと書いていた気がするから似たようなものかも知れなかった。まあわたしの場合は、局長になって天下りスタンプラリーに参加するためには、それまでにたくさん勉強しなければいけないということをよく知らなかったが故の進路であったのだが。
 ......さて、雪ちゃんは相変わらず白紙のまま、次々と書き進めていくわたしたちを恨めしそうに見つめている。冷血漢(男じゃないが)である雪ちゃんがここまで弱った態度を見せるとは中々に珍しかった。月子ちゃんはそんな彼女の袖をくいくいして尋ねる。
「ねーね、雪ちゃん、去年はなんて書いたの?」
「白紙提出して怒られました。今年も担任同じです」
「なるほどー。それじゃあ今年は何か書かないといけないわけだー」
「はい。けれどまるで思いつかないんですよ」
「あ、それわかるー! わたしも自分が働いている姿がまるで想像できないよ。マヤちゃんわたしを養ってー。老老介護してー」
「老老介護はしたくないなぁ......
 こうしている間にも時間は過ぎ、宙は赤鴇に染まっていく。しかし雪ちゃんの進路調査は相も変わらず白紙のまま。去年の面談で担任教諭から「来年までに将来について考えておくんだぞ」と言われて、明日がその来年になってしまったのだから、迂闊なことを書くわけにもいかないらしかった。
「ねえ先輩。......わたしによさそうな仕事ってありますか?」
 彼女は半泣きでわたしたちに助けを求めた。本当に、マジでレアな光景だった。具体的には地中に含まれるネプツニウムくらい。
「じゃあ高等遊民」
「それ現代日本の言葉でニートって言いますよ。摩耶先輩」
「悪徳弁護士とか?」
「否定はしませんけれど、最初から悪徳ってつけないでください。月子先輩」
「うーん難しいね」
 ......その後、四人で悩みに悩んで悩みぬいた。隠者、仙人、霊媒師、ひよこ鑑定士などいろいろな職業が提案されては却下されていった。そのような状況の中、最終的に神楽ちゃん提案である「将来の夢:大家」という一定の結論に達することができたことは僥倖だと言えよう。つまりは不労所得万歳、万歳、万万歳ということだ。

       Ⅲ

「わたしは病的な人間だよ。そして意地悪な人間だ。人好きのしない人間だ。どうもこうも肝臓が悪いせいらしいんだけれど......」
 また別の日、放課後のボランティア部の部室。わたしは月子ちゃんと雪ちゃんに悔恨を告げる。わからない人のために解説しておくと、ドストエフスキイ先生の『地下室の手記』の冒頭だ。もっとも、『地下室の手記』の主人公であるサンクトペテルブルクの中年限界ヒキニートとは違って、わたしはクラスで三番目くらいに可愛い女の子女子高生JKなのだが。
 雪ちゃんは、まーた病気の発作がはじまった、と言わんばかりの冷ややかな目で「はいはい。そうですね」と流し、月子ちゃんはややあってから「うん」と頷いた。なるほど、君たちは摩耶さんの扱いをよくわかっている。
「まー↑あ↓、その通りなんだけれどさ↓。......これはうちのばっちゃが常々言ってたことだからよく聞いてくれよ」
「はあ」
「自分のことを性格悪いっていう奴は、本当に性格が悪いから気をつけろ。ソースは摩耶さん自身」
 いちおう言っておくと、聖人であるうちのばっちゃはそんなことを言っていない。古代インドの文献が、自らの説を強調するために偉い学者の名前を借りてきているのと同じ現象であり、説の提唱者はもちろんわたし自身である。しかし、この説はかなり真理を突いていると思う。
 わたしのごとき「性格の悪い」連中は、ある程度自らの性格の悪さについて自覚的である(天然サイコパスの雪ちゃんは例外である)。だから「わたしって性格悪いからさ」という言葉の裏には、ほぼ例外なく「自分の性格の悪さを理解しているわたしはまだマシ」「性格悪いことを公言しておけば許される」という本当に性格の悪い真意が存在するというわけだ。いやわたし性格悪すぎ。
 雪ちゃんはわたしの言葉にあーはいはいと聞く耳を持たない。いつものことだった。対して月子ちゃんはわたしの言葉に食い入った。......いつものように予想外の方向からではあったのだが。
「え、マヤちゃん性格悪いの?」
「えっと多分。自覚している部分では性格悪いと思う。うん」
「それなら、摩耶先輩は自分自身のどういうところが性格悪いと思っています?」
「自分のこと悪く言うのが好きな露悪趣味とか、人を馬鹿にしたような言動をするとクールな振りをできると勘違いしてるところとか。自分でも性格悪いなって反省してたり.........? えっとさ、やめないこの質問。結構メンタルにきついよ」
「やっぱり先輩、そこまで性格悪くないですよね」
「それでもわたしは性格悪いんだい」

       Ⅳ

 わたしはふと思い出したことがあり、何も考えることなく会話を見切り発車させた。
「不健全な話をしよう」
「マヤちゃんどんくらい不健全な話をするのー?」
「ヰタ・セクスアリスくらい」
「何とも言えないラインですね。続けていいですよ」
「ばっちゃによれば、僕っ娘は150%が核地雷級のメンヘラ。100%はメンヘラで、50%はメンヘラの彼氏がついてくる。何でもいいから温めておかないと大爆発するらしい」
「はぁ。また始まりましたね」
 一応解説しておくと、僕っ娘とは一人称に「ボク」「僕」「ぼく」を用いる女の子の総称である。経験則上、分布割合は百人に一人くらいであると思われる。この僕っ娘という言葉に対してわたしはいい思い出を持っていない。というか、わたしの過去を知っている月子ちゃんの前でこの話をするのはまずかったのでは......? わたしは、既に何も考えずに会話を始めたことを後悔し始めていた。撤回しようかと思うもむなしく、先に月子ちゃんの口から言葉が漏れる。
「......そういえばマヤちゃん。小学校と中学校の頃は自分のこと『僕』って呼んで、人のこと『君』って言ってたけどなんでやめたの?」
 月子ちゃんはそう言って首を傾げた。わたしの額を冷や汗が流れ落ちた。世の中には闡明しなければならないことと、敢えてそっとしておいて闇に葬らなければならないことの二種類がある。わたしの僕っ娘疑惑は間違いなく後者に属する。やめろ。
「その話題はいけない。待って。話せばわかる! ごめん!」
「へぇ、摩耶先輩って僕っ娘だったんですか」
 しかしこの天然サイコパス少女が、人の弱みを知ってすごすご引き下がるなどということはあり得なかった。問答無用と言わんばかりに急所に殴りかかってくる。
「別に......いやマジ別に。別に? 別に????」
「僕っ娘の摩耶ちゃん可愛いし、かっこよかったからわたしは好きだったよ」
「うぐっ」
「他にもあります? 摩耶先輩のかっこかわいいエピソード」
「えーっとね、マヤちゃん小学校の頃からブラックコーヒーが飲めたんだよ」
「うわあああああああ」
「月子先輩はまだ飲めませんよね。ブラック」
「うん。あれ苦い。コーヒーの味がする。――あとね、マヤちゃんはね、小学校の頃からクラシック音楽を聴くんだよ。ラフマニノフとか好きなんだよね。レコードかけてダージリンの紅茶を口につけながら聴いてたよね」
「ひぎい」
「ラフマニノフいいですよね」
「だよねー。わたしも摩耶ちゃんに色々と聞かせてもらったよー。紅茶は渋いから砂糖ドバドバじゃないと飲めないけどねー。あとマヤちゃんは小学校の頃から漫画とか小説もかいてて、それをネットに投稿したりしてねー」
「......(失神)」
「流石にやめてあげてください。摩耶先輩のライフはもうゼロです」
「......?」
「月子先輩ってあれですよね、実は結構な天然サディストですよね」
「またわたし何かやっちゃった?」
「あれ、もしかして月子先輩......自覚して......」

       Ⅳ

 目を覚ますと、わたしは真っ暗な部屋の中にいた。あわててポケットからスマートフォンを取り出し、ライトをつけるとそこは見慣れたボランティア部室。待ち受けのデジタル時計の針は九時半を指している。何があったのかはよく覚えていないが、どうやらわたしは炬燵の中で眠っていたらしかった。
「んにゃ、マヤちゃん起きた?」 
 わたしが起きたのに気付いたのか、枕元に座っていた月子ちゃんがわたしの方を向いた。どうやら彼女は真っ暗闇の中、わたしが目を覚ますのを待って、ただぼんやりとこたつでぬくぬくしていたらしかった。
「おはよ月子ちゃん。別に起こしてくれてもよかったのに」
「なんと。そのような手が」
「気付いてなかったんだ。それでも待っててくれたんだよね。ごめん、ありがとう」
「んー。わたし一人だと家にも帰れないしね」
「道忘れたの?」
「ううん。マヤちゃんが『夜は一緒じゃないと外に出てはいけない』って言ってたから」
「なるほど」
 わたしは月子ちゃんほど従順な人間を知らない。彼女は人に言われたことを疑わず、そっくりそのまま受け入れて行動してしまう。きっとわたしがお願いすれば、この天才少女はどんなことでも聞いてくれるんだろうな、という自然な確信があった。わたしは静かに月子ちゃんに対して微笑んだ。
「帰ろう」
「うん」
 手を掴み、立ち上がる。もうとっくに門扉は閉じており、下手に行動すればセ○ムが飛んでくることになるだろう。慎重に行動しなければならない。幸いなことに、クラスのバカ男子どもが深夜の学校に侵入してサッカーをやっていた(一時期そういうのが流行したのだ)ルートを知っているから、問題なく抜け出すことができるだろう。月子ちゃんの小さな手を掴ったまま、イチョウ並木の隅を抜けていく。天上には望月が輝いており、視界は十分であった。夜の学校は怖いので少し足早に、けれど月子ちゃんをこかさないように気を付けながら進んでいく。
 やがて学校を抜け出し、自動販売機のジュースでほっと一息ついて乾杯した。月子ちゃんはプルトップの缶を開けることができないので、わたしがかわりに開けてあげる。時計を見れば、夜の十時になろうとしていた。遠くで暴走族のバイクが走る音とパトカーのサイレン音が遠くで聞こえる。少し大回りだけれど、大きな通りを進むことにした。
 彼女の手を引いて夜の街を歩きながら、少し不思議に思った。どうしてわたしは月子ちゃんのためにこんなにも働いているのだろう。......予め断言しておくと、わたしに百合の趣味はない。着替えさせたりお風呂にいれたりで、月子ちゃんの全裸姿は毎日のように見ているしぷにぷに肌にも触れているが、別に何も感じないし、彼女のことを恋人にしたいと思ったこともない。では親友だから、わたしは月子ちゃんのために尽くしているのだろうか? 確かにわたしが月子ちゃんに対して友情を抱いていることは事実であるけれど、それはわたしの彼女に対する献身の根源ではない。友情は奉仕と等価ではないからだ。
「ねえ月子ちゃん」
「んー」
「なんで、月子ちゃんはいつもわたしの側にいるの?」
「マヤちゃんが好きだから?」
「そうなんだ」

 やがて家に着いた。わたしは猫のように風呂を嫌がる月子ちゃんの首根っこを掴んでお風呂場に連れていく。油絵具だらけのブレザー服をラックに掛けて、学校指定のシャツを脱いでもらい、毎回わたしが選んでいる下着を外す。そして簀子の上で掛湯をして、一緒に浴槽へと浸かった。小さい頃に溺れまくったトラウマがあるらしく、わたしが後ろから抱き抱えていないと彼女は湯船にはいってくれない。そんな月子ちゃんだとしても、やはりお風呂の気持ちよさにはあらがえないらしく、やがて「ごくらくー」と力を抜いていった。彼女は何かふと思い出したように、湯船の中でわたしの方に首を向けた。
「ねー、マヤちゃん」
「どしたよ」
「結局さ、摩耶ちゃんは何になりたいの?」
「貝」
「怖い映画じゃん」
「けど本当のところを言うと、わたしは多芸だから何者にでもなれると思うよ。勉強も決して苦手ではないから、何なら弁護士や会計士を視野に入れてもいいかもしれないし、地方公務員に落ち着いてもいい。月子ちゃんとしては、どんなわたしが好いと思う?」
 月子ちゃんは目を閉じて、そうじゃないと首を振った。
「わたしは実はあるよ。将来の夢。......ねえ、摩耶ちゃんは何になりたいの?」
「.........」
「まだ聞いてないよ」
 わたしは月子ちゃんに何か言って安心させてやろうと思った。しかし、具体的な意見なんてものはみじんもなかった。普通の人たちはわたしの沈黙に「あっ」と察して、質問を引っ込めてくれるところだが、月子ちゃんにそんなアイデアはないということをわたしはよく知っている。少し息を飲んで、小さな声で言った。

「わたしは、何者にもなりたくないな」


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