偽物世界にさよなら

竹原凰希



「とある一日」コピーして 何百枚も積み重ね
小さな小さな巣を作ろう 
誰もいらない 何もいらない
私はただただ疲れてる


カチャリと小さく音立てて 
偽物世界は動き出す 私を中に閉じ込めて
さようなら さようなら
ひそひそ話も 嘲笑も

思う存分一人きり 床に転がり ナマケモノ
音一つしない家の中 チクリとするのは勘違い?
終わらない 終わらない
世界は廻るよ 永遠に

今日からしばらく探検家 世界一周徒歩の旅
どこまで行っても人はなし 空の上にも月はなし
信じない まだ歩け
世界の果てには 何かある

世界の中は大迷宮 手繰っていける糸はない
世界の外には何もない 常闇だけがそこにある
どうしよう どうしよう
世界はそれでも 止まらない

SOSと書いてみて 下手な口笛吹いてみる
わーわーぎゃーぎゃー叫んでも 誰もなんにも出てこない
一人きり 一人きり
私はこれから どうしよう

家に帰ってうずくまる 
きらりと光る棚の奥 古びた本とレコードが
逃げないと 逃げれない
ごろりと転がり 「暇つぶし」

いつもの本を読み返し いつものレコード流し聴く
いつものように早寝して いつものように目が覚める
これでいい これがいい
「いつもこうだ」と 言い聞かせ

夜の帳を切り裂いて ガツンとどこかで音がした
いつもの本が床に落ち いつものレコード真っ二つ
どうしたの 君は何?
きらりと光る 星ひとつ

星はすうっと流れ出す 思わずはだしで追いかける
小さく光る星屑が かすかに糸を紡ぎだす
消えないで 消えないで
せめて私が いるときは

世界の果てに星はいた 常闇照らしてただ笑う
世界の外には あの世界 夜空に星座とお月様
飛び出すの? 大丈夫?
あともう一歩 出せないで 

いきなり消えた流れ星 世界が闇で消えていく
うるさい世界か巣の中か 境界線でただ迷う
戻りたい 戻りたい?
あんな世界を捨てたのに?

「大丈夫」星が囁いて いくつも星を連れてきた
きらめく光に魅せられて 小さく一歩前に出す
大丈夫 もういいの
偽物世界が 遠くなる


いつもの一日破り捨て おめかしをして外に出る
おしゃべりをして大笑い 思ったよりは悪くない
嫌なこともある 泣きたい日もある
けれどもこっちがいいのかも


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