雑文集

白内十色


??金貨吐きの少女

 ある魔法使いが娘に魔法をかけました。その魔法とは物を喋る時に口から金貨が飛び出す魔法です。
 一言喋れば金貨が一つ。二言目で金貨が二つ。金貨の表面の銀紙を剥くと、中にはチョコレートが入っているのです。
 チョコレートはとても美味しく、娘はそれを気に入りました。
 銀紙がちょっと邪魔でしたが。
 
??涙の町

 あるところに、涙を集める町がありました。 町には大きな湖がありました。
 悲しいことがあったとき、嬉しいことがあったとき、町の人は湖に集まって、そこで涙を流すのでした。
 親が死んではひとしずく、子供が死んではふたしずく。 流れでる川のない湖でしたから、涙はそこに溜まり続けました。
 町の人が死んだときは、湖に沈めて葬る風習でした。
 涙は乾くと塩になります。この町で亡くなった人のなきがらは、たくさんの塩に囲まれて、いつまでも残り続けました。
 
??ジャンク・ゴーレム
 
 あるところに、機械いじりの好きな少年がおりました。
 少年は動く人形を作っていました。いわゆる、ロボットです。
 材料はとっても簡単で、十字架を一つと、涙を一滴。河原で拾ったガラクタでつなぎ合わせます。ちっぽけな材料ですが、それが、少年の持っていたすべてなのでした。
 やがて、ロボットは歩き出します。少年はそれを見て喜びました。
 なにせ、その足跡も、
 腕をふるたび零れ落ちるオイルの、アスファルトを染める黒さも、
 光に照らされた機械の胸元、そこに焼き付けられた刻印も、
 すべて、少年から生まれたのです。


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