嫌な詩

藩荷原課


1
やめときなって。後悔するよ。
君の人生みたいにさ。






2
「○○とは全く最低の人間である。
「穏やかに振る舞っているが、内心では人を見下し、自分を誰よりも上等だと思いこんでいる。
「確固たる自分というものが無く、人に媚びを売るようなことしか言わず、思考に一貫性というものが無い。
「その癖自分を磨き上げもせず、他人を貶めることで自分を相対的に上げようとする。
「このような人間が世間において一定の評価を得ているのは、甚だ道理を外れた嘆かわしいことである」

○○に好きな人の名前を入れてください。
全く違和感の無い文章ができます。









3
人斬り小僧は辻の中
左に刀右に筆
へらへら笑う蚯蚓腫れ
どこの絡新婦が付けたやら
今宵斬ったは阿婆擦れ夜鷹
生き血滴る地獄筆

「お月様に僕の名前を書けば、それを見てお母ちゃんが帰ってくるかもしれない」

4
 ついに完成しました『クロウイラズ』!
 皆さんこう言われたことはありませんか?
「苦労してないからそんなに甘ったれなんだ」「恵まれてる奴は気楽だよね」「苦労が足りないんじゃない?」
 擦れてることしか取り柄の無い奴に、苦労自慢をされて悔しい思いをしたこと、皆さんありますよね~。
 そこで役に立つのがこのお薬、『クロウイラズ』!
 この『クロウイラズ』を飲むとあら不思議!
 三日三晩体中を内側から食い荒らされるような、地獄の痛みを味わえます!
 さらになんと、心を著しく弱らせる効果もございます!
 これで、この世の何もかもに絶望すること間違いなし!
 薬の効果が切れる頃には、皆様も晴れて苦労人の仲間入り!
 これでもう、二度と甘ったれた希望なんて持てなくなります! ね、すごいでしょ!
 今お買いあげいただいた方には漏れなく自殺セットもプレゼント! 苦しまずに死ねます!
『クロウイラズ』! 大好評発売中!
 注意:用量と用法を守ってご使用ください。副作用として人間でなくなることがあります。









5
世界の裏側に、影ひまわりの咲く
灰色の空の下、草も生えない野っ原
見渡す限りの灰・灰・灰色
地面に、ひまわりの影が咲いている
夏風の影が吹くと
影ひまわりがゆらゆらと
きっと表は夏の盛り
私は影を摘み、麦わら帽子に飾る
薄っぺらな黒い花は、独りの私に
よく似合った
6
 ある日、少女は森の中でお菓子の家を見つけました。
 クッキーの壁、キャンディーの窓、チョコレートの屋根。
 少女が近づくと、中から黒い三角帽子をかぶったおばあさんが出てきました。
 おばあさんはニコニコと笑いながら、少女をお茶に誘いました。
 おばあさんは、目が覚めるほど美味しい紅茶と、美味しいお菓子を振る舞ってくれました
 そのお茶会は、少女にとって夢のような時間でした。
 
 しばらくしたある日、少女はまたおばあさんとお茶会がしたいと思い、森へ入って行きました。
 お菓子の家があった場所へ行くと、お菓子の家は真っ黒になっていました。
 目を凝らして見ると、数え切れない程の虫がうぞうぞと蠢いていて、腐ったお菓子の家を食べていました。
 少女が後ずさると、中からおばあさんが出てきました。
 顔を虫が覆っていて表情はわからなかったけど、
 確かに、少女に向かって手招きしていました。
7
世の人々があんまりにも
地獄地獄と嘆くので
僕は仏を探すことにした
この世で一等恐い場所で
仏は有りやと尋ねてまわる
しかし誰もが口をそろえて
仏は有らずと唱えるばかり
兵士も娼婦も孤児も下衆も
焼かれるように生きている
さて、君に問おう、地獄に仏は有りや?
8
僕の魂は、僕の体を食い破り駆け出した
薄汚れた僕の亡骸を踏みにじり
一心不乱に前進する
アスファルトを駆け、人々を突き飛ばし
山を駆け、木々を薙ぎ倒し
風よりも速く、星の下を
七不思議を置き去りにして
運命すら届かない遠い場所へ
そして誰もいない岬へ辿り着き
腹いっぱいに吠えて朝日に溶けるのだ
僕はそのようにして死にたい

9
じゃあな、もう来るなよ。


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