零度の標的

羽月






 X1

「初めまして。僕はこの洋館の主の綾瀬。急な呼び出しに応じていただき感謝している。どうぞソファへ......」

「さて、聞きたいことは山ほどあるだろうが早速本題に入ろうか。貴方もその方がいいだろう」



 A1

「少し、頭を使うか」

「はい?」

 彼がそう唐突に切り出したのは茹だるような真夏の休日。私が第二の家の様に通う彼の住処、洋館でのことである。

 この洋館は私が事件に巻き込まれた時からお世話になっていて、常に私を癒してくれる居心地のいい場所だ。大抵は今の様にこの大きな書斎のような応接間で彼は机でひたすら何かを読み、私は少し離れた大きなソファでジュースを飲みながらゆっくり、たまに思い出したように私が話し......静かで安全な時間が流れる。

「ああ。友人が持ち込んだ事件の話だが、西村さんも一緒にと言ってな」

「私も、ですか」

「まあ深い意味はないだろう」

 彼の喜んでいる顔はあまり見たことないが、こういう嫌そうな顔は何度も見ているので思わず苦笑した。友人いたんだ、という言葉は飲み込んでおく。

「そんなに難解なんですか」

「愚問だな」

 ええ......。

 しかし確かに彼が一人でわからないほどの事件で私が口を出せる訳もない。私は諦めて彼の隣に移動し、机に広がる資料に目を移す。しかしそこに広がっていた資料が示していたのは、全く平穏でない人の死だった。



 B1

 ......静寂が痛いな。

 不思議なことに緊張というものを感じていない。命がけだと頭ではよく理解しているが、自分でも恐ろしいほどに落ち着いている。

 時間を確認すると、今しがた日付を新しくしたことを示していた。

 ......静寂。

 ザクザクという自分の足音。

 全身に襲う感覚。深夜、研ぎ澄まされたような、低く冷たく澄んだ感覚。

「グルル......ッワン!ワン!」

 少し離れた民家から犬の鳴き声が聞こえた。心配せずとも君に用はない。しかしこの時間に喚かれ誰かに姿を見られると非常にまずい。自然と早足になる。下手な対処をしないのがコツだ。

 幸い犬も自分の姿を知っているせいか、すぐに大人しくなった。

 ザク、ザク、ザク。

 ス、と冷たい空気を吸った。海のにおいがする。

 持ってきたクーラーボックスの中身が健在であることを確認して、コンクリートの剥き出しになっている場所に、その他のオプションとともに置く。

 海が静かにこちらを見ていた。なるほどこの防波堤は、眺める分にも良い。

 ......ここだ。この場所でいい。あとは、待つだけ。



 A2

「これモザイクとかも無いし、一般人がみていいんですか」

 残酷な資料を前に手で顔を覆い、指の隙間から表情を伺うが、彼は平然と眺めているだけだった。この人は悪魔だ、間違いない。

「君が他言しなければいい話だ。他言するような友人がいるかわからないが」

「友達くらいいます!」

 失礼な! そういえばさっき似たことを思った気がするけれど気にしない。

「それはよかった」

 棒読みの安心をしつつ、彼も資料を手に取る。まるで新聞を眺めているような感覚なんだろう、そういえばこの辺の話には慣れているのかな。

「で、どう思う。これを見て」

「え? あ、いや、まだちゃんと見てなくて......待ってください」

「致命的な傷は前面だからまあ、少々刺激が強いのもわかるが」

 ふう、とため息が聞こえた。私が手に取るも、待ってくれるわけもなく。遺体の写真を飛ばして、急いで資料を開いた。

「今年の7月17日水曜日、××市で変死体が発見された。被害者は大学3年生の男子、名前は堀口遼。場所は海岸沿いで、防波堤の下。死因は頭部強打による脳挫傷。遺体発見時刻は午前6時、死亡推定時刻は午前二時半。凶器の類は周囲に見られなかった」

「防波堤の下、ですか」

「ああ。この防波堤は釣りスポットらしく、少々高さがあるが、端の海に出ているところでは釣りをしている人をよく見かけるらしい」

 ふうん。夜釣りとか、見かけたことがある。そんな誰かが死んだ場所で釣りなんかもうしにくいだろう。コンクリートの防波堤の横にアスファルトの道路。どこにでもありそうな人工物にマークされた人型のテープだけが残されている。おそらく転落したのか、血の跡らしいものも見える。

「当人の所持物に不自然な点はない」

 財布、携帯、身分証明証。なんだか少ないようにも感じられる。

「その次の頁が近辺の聞き込みによる情報だ」

 慌ててめくると、急に文字ばかりの資料が現れる。いわゆる証言ってやつね。

 まずは相模裕樹、第一発見者。

 36歳会社員で、午前六時過ぎいつも通りマウンテンバイクで通勤していると視界の隅に不審なものを発見、振り返ってもう一度確認、そして腰を抜かせた後にあたふたと警察に連絡。その時に遺体に触れたことを認めている。

 臼井美智子、近隣住民。

 沿岸のそばには数件家があるから、おそらくその中の一人。内容としてはその日の夜はおとなしく寝ていたとのこと。午前二時ごろ、犬の鳴き声を聞いて一度起きている。

「この犬の鳴き声の時間って、死亡推定時刻に近いんですね」

「近くに、野良犬が棲みついているらしい。特に害を与えるわけではないのだが、立派に吠えはするということだ」

 嫌そうな顔本日二回目。......犬、嫌いなのかなあ。

「犬より猫だな」

「あ、ばれました?考えていること」

 ふん、と鼻を鳴らされる。早く次に移れの顔だ。

「被害者は逃げ回る程に大の犬嫌いだったらしいが、僕はそこまでじゃない。あくまでどちらかといえばの話だ」

「はいはい」

   じとりとした視線を受け流し資料に視線を戻す。

 そのあとに続く近隣住民の反応は大体同じものだった。ただこの臼井さんは、犬の鳴き声とほぼ同時に物音も聞こえた気がする、と証言している。

 坂下圭吾、被害者の友人で同年。

 大学にいる間は一緒に行動しており、プライベートでも付き合いが多い。被害者に恨みを持つような人は思い当たらないと言っていて、自分はその日体調が悪いこともあり早い時間から家にいたらしい。下宿なので三駅ほど離れた場所だが、アリバイはない。ちなみにこの日は誕生日だったらしく被害者と会う約束があった。

 溝端昭、例の防波堤でよく釣りをする人。54歳男性。

 夜釣りが趣味らしく、その時間はよくそこにいるらしい。しかしちょうど短期の出張で県外にいたために当日の情報はない。自分以外に釣りをする人は大概が昼の活動で、その時間に人がいるのは珍しいと主張している。

 被害者の母、堀口紗英は......胸が痛かった。

 この防波堤から少し離れたところに住んでいる三人家族で、両親は夜に息子が出かけていたことも気づかなかった。てっきりもう大学に行ったのかと思っていたところに連絡が来た。

 きっとその悲しみは想像できないのだろう。この無機質な文面から、悲痛な叫びが聞こえてくるようだ。

「息子さんが亡くなっているのに、疑われるんですか」

「そういうもんだろう、その資料を作った人間がどれだけ心を持っていたかは不明だが、必要な手順だ」

「そりゃそうですけど......。ううん、なんて言えば。心が痛みますね」

「まあ、そうだな」

 一呼吸あいた。見上げると彼はこちらを見ていなかった。

「人間が全員そう命を尊いと思えれば、事件なんて無いのだが」



 B2

 もう一枚、着ておけばよかった。冷たい空気が肺に刺さる。緊張しているのだろうか。していないのだろうか。

 自分はとっくに正常な人間ではない......今日は特に。

 そう思っていたところに、遠くからザクザクと音が聞こえた気がした。そっと振り返ると、何も疑わない顔でこちらに向かって来る男の姿。

 やあ、と言うように手を挙げた彼に、とく、と心臓が鳴る。

「今夜は冷えますね」

 無邪気な、けれど時間を気にしてか囁くように声に苦笑いで返す。

「海風が沁みますよ」

「外から来た僕なんかは特に、です」

 彼は自分の隣に腰を下ろし、いそいそと夜釣りの準備を始めた。防波堤から二つの竿が並ぶ。

「釣れましたか」

 今クーラーボックスを開けるわけにはいかない。だが彼の問いは予想できていたので、考えた通りに演じてゆく。

「いいや、駄目ですね。幾つかは引っかかったのですがいかんせん小さいもんで、返してしまいました」

「そうですか......」

「およそ二時間いますけれど、どうでしょうかね」

 静寂の夜に戻る。ひたすらに続く波の音。先ほどと違うのは横に体温があるだけ。このいつも通りの静寂を破るタイミングを、見計らっていた。

 防波堤に体当たりする波。もうやめろと言っているような。

 ......そうして30分経過を確認。

 落ち着け。まだ一段階。

「あの」

 漆黒が暴れる海をただ眺めて獲物を待っていた彼はこちらを振り向く。

「今夜は諦めて、飲みませんかね。そういう気分です」

「おお! いいねえいいねえ、いい提案です」

 表情が輝いたことに、心底安心した。

 次の段階。

「それは良かった。そうだ、おすすめのお店がありましてね」

「ここから近いのですか」

「ええ、穴場みたいなもんですよ。そこのバス停をまっすぐ行ったところに」

 彼は腕時計をちらりと見た。

「今二時すぎですが、こんな時間にやってる店があるんですね」

 そうなんですよと適当に返事をして立ち上がった。正直今開いている店なんか知らないが、疑わないので合わせておく。あるとしたらコンビニくらいのもんじゃないか。自分の釣り道具を片付けていると、彼も空気を読んだのか片付け始めた。

 第三段階。

 防波堤の上で二人立ち上がる。

 風の冷たさはもう感じなかった。

 クーラーボックスから伝わる振動は、確実に中身が健在であることを示している。環境は整ってしまった。整ってしまっている。

 目の前にあるのは彼の背中だけだ。

  何も疑わなくなった、話し始めてから半年の成長すら感じるその背中だけだ。

 その一挙手一投足、音、何もかも鮮明でゆっくりで......。

 静かにクーラーボックスを開く。

 その後頭部を見つめる。

 手に持ち、大きく、振りかぶる。



 A3

「結局どうなんだ」

「どうって言われましても、私素人ですよ。しかも釣り好きさん以外はこれといったアリバイもないみたいですし」

 彼が何故こんな資料を持っているのかとか、まず私に何をさせたいんだとか、聞きたいことはたくさんあるけれどそこはぐっとこらえた。

「去年探偵ごっこで、道端に食べ物が落ちていただけで騒いでいたのはどこにいったんだ」

「......あれは! ............な、なんというか、若気の至りというか」

「立派に推理していただろう」

 多分ただの偶然で終わりましたけどね! 多大なるご迷惑もおかけしました、食べ物が落ちていただけで!

「もう勘弁してください」

 と、降参するしかなかったのだった。

「とにかく、分からないなら情報を整理してみろ」

 情報を、整理。

 ううんと、考えやすいところから始めていこう。

「防波堤からの転落死で、死亡推定時刻と証言の時間がほぼ同じなので、被害者はこの防波堤で亡くなったのだと思います」

 前方に致命的な衝撃、うつ伏せ、脳挫傷。

「凶器が無いってことは、持って帰ったとか? あっ、それかもみ合った結果とか。だとすると、犯人に最初は殺意がなかったってことになりませんか」

「ふむ」

 そうしたら過去の因縁なんてなんでもいい。突発的な動機になる。

 過去の因縁だけでなくても、突発的な金銭トラブルなんかもあるだろう。それこそ友人である坂下さんとか。

 もしかしたら近隣住民とトラブルになっていたかもしれない。それか夜釣りが好きな溝端さんがじつは帰れていて、実際アリバイはなかったなんてこともありうる。

 堀口さんが実は知ってはいけない秘密を握ってしまっていたりとか!

「動機はこの際考えなくていい。僕らの知らない世界は山ほど存在する」

 ......さすが、お見通しですね。

「だとしても犯人が全く絞れないんです。こんな時間に連れ出せるような間柄だろうなっていうのはわかるんですが、同級生とも思えませんし」

 だって、二時だよ、二時。

「難しく考えなくていい」

「そればっかり」

 思わず口を尖らせた。どうぞ嗤ってください。

 でも彼が全く分からないような話を持ち掛けるとも思えないし、何よりとても気になる。

 被害者の堀口さんも、不運だなあ。財布はあるし、いったい何のために殺されたのか全然見当がつかない。恨んでも恨み切れない。

 この事件の一番わからないのは、理由だ。彼は考えなくてもいいというけれど。

「ん?」

 ......もしや。そんなことが。

「ほう」

 彼が私の表情の変化に気づき、満足そうに頷く。

 その時、ただの意地悪じゃないと思った。





 B3

 ......静寂。

 世界からすべての音が消え去った世界。

 目の前にはつい先ほどまで海を見つめていた男だった何かが横たわっている。もう二度と言葉を交わすことのない何か。

 その不可逆性と、略奪の感覚。

 そしてちょっとした自己満足。

 ......ふう。

 ひとしきり味わったところで、帰る準備を始めた。まず手に持っていたものをどうするか少し悩んで、そのまま海へ投げ捨てる。

 下手に手は加えなかった。あとは通勤中の会社員だかなんだかが何とかしくれるだろう。警察だのなんだのも考えなくていい。カラスに食われることもない。

 さあ帰ろうというときに、もう一度振り返った。

 その恐怖の瞳は依然としてまっすぐ静かに夜空を見つめている。永遠に見つめているのだ、きっと。

 よく聞くには、君は星に並ぶ。

「......おやすみなさい」

 自分がそっちに行ったら、思う存分殺してくれ。



 X2

「とまぁ、流れとしてはこんな話があったわけだ。勿論思い当たるだろう。無いということはできない」

「なぜなら、君の名前は既に挙がっているからだ。」

「......そんな顔をする必要はない。僕は警察のものではない」

「君も気になるだろう。そして気付いている」

「続けてもいいかね」

「......よかろう、沈黙を了承とみなす」



 A4

「私、勘違いしていたのかもしれません」

 彼は新しいコーヒーを少しずつ味わっている。

「これ、本当に事件ですか?」

 そのコーヒーはいつも通りの味のはずで、とりわけ重宝するまでもない代物だと彼は以前言っていた。一口ずつ、ゆっくりと口に運ばれる。

「もう答えは出ているんだろう」

「そういわれると自信はないですが」

 だって判断材料が少なすぎる。でもその少なさがきっと答えなんだと思う。

「あまりにも犯人の情報含め情報がなくて。でも」

 ──被害者の堀口さんも、不運だなあ。

「それは最初から犯人は存在しないからじゃないですか」

 ふわりと笑う。

 そうか、それが答えなんだ。

 被害者は防波堤からただ転落した。

 ......そして、犬の鳴き声。

「綾瀬さん」

 久々に彼の名前を呼んだ気がする。

「被害者ってすごく犬が嫌いって、言いましたよね」

「ああ」

「嫌いな人って、ものすごく逃げ回りますよね」

「そうだな」

「あの防波堤って、街灯遠くて足元が見えにくそうって言いましたよね」

「言ったな」

「そういうことですか」

「そういうことだ」

 ──被害者の堀口さんも......。

「紅茶でも飲むか」

 一寸の静寂と、私の複雑な表情に耐え切れなくなったのだろう、珍しく彼から沈黙を破った。

 こういう時の彼は、少し優しい。





B4、X3

 慄然とした。

 目の前の綾瀬という男に語られた話に震えすら起こる。

 自分の手を染めたあの防波堤から去って数か月後、いきなり行ったことのない洋館へと呼び出された。悪戯ではないことを確認し来てみたらこれだ。

 ここに来るまでの間、思い出していた。

 あの日のことを。

 殺意を持ってこの手を振り下ろした時の感覚を。

「じゃあ、堀口は、野良犬に吠えられて、逃げたところで、あの、防波堤から落ちたって、言うんですか」

「そういうことで落ち着いている」

「あの、溝端のおじさんは、本当にいなかったと」

「ああ」

 ......それは。

 そんなことはない。

 そんなはずはない。

「信じられないことは分かる」

 床を見つめていた。表情が固まっていることが、自分でもわかる。

「彼女......西村には資料の一部しか渡さなかったが、情報から判断してそれ以上の結果が見込めない」

「そんな、それじゃ、そんな」

 自分のしたことは。

 この記憶は。この手は。

「君は人を、殺めたんだろう」

 声が耳を打つ。木霊して脳を埋め尽くす。

「堀口君の亡くなったその半年後、1月に」

「そうだろう、坂下圭吾君。大学の友人なんだろう」

 声が。

 声が鳴り響く。



「君は7月の事故の詳細を知らなかった、それか信じていなかったんだろう。場所からしてきっと溝端氏が殺したのだと決めつけて、以後、彼に近づいた。そして1月、防波堤から降りたところを襲った。違うかね」

 そう、堀口は大切な友人だった。

「同じような形を目指したのだろうが、若干のズレがある。堀口君の遺体はうつ伏せだが、溝端氏の遺体は仰向けだった。どこまでの再現を目指したのか知らないが」

 奪ったやつを許せなかった。

「君は事情聴取の時に知った死亡推定時刻に合わせて、わざわざその二時間前から準備した。その12時ごろに犬に吠えられなかったか? その時間のズレは仕方ないが」

 だから堀口の代わりに自分がやるしかないと。

「凶器は見当たらなかったが、季節的にも雪を固めてでもしたのだろう」

 ああ、あの日は本当に寒かった。

「いくら寒くとも海に投げれば溶けるだろう」

 心まで凍えるようだった。

「7月その日、彼は何故そんな時間に出ていたのか」

 いや、もうとっくに凍えている。あいつは別に大学からじゃない。幼馴染だ。それが、奪われたんだともうと、今だって凍えている。

「君の誕生日だろう」

 ハッとして視線を挙げた。冷徹な目が突き刺さる。それよりも放たれる言葉に集中する。

「誕生日だ。おそらく日中は気付かれると思ったんだろう。どんな事情があって何を買おうと個人の話だが、メモが見つかった。時間的にはコンビニとかそんなもんじゃないのか」

「でもそんな。お母さんからすでにもらって」

「買い足しだと。ぜひ読んでほしかった本と言ってな」

 用意してあったのだろうその本は小さくて、内容は体調不良のための料理本、といった感じだった。

 ......馬鹿だよなあ、ほんと。

 風邪なんていくらでもひくだろ。

 何回だって治せるだろ。

 この声は一生届かないと知った。

 自分の罪も一生晴れることも無い。

「僕の話はそれだけだ。今後何かしようという気は一切ない。君の自由だ」

 綾瀬という男は自分を残して立ち上がった。

「好きにするといい。急な呼び出しに素直に応じてくれたことは、本当に感謝している」

 ......静寂が痛いなあ。

 頬に、あたたかな何かが筋を作った感触。

 心が凍えて、震えて、仕方ない自分だけがそこにいた。

 





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