九月の海

あみの酸






『僕たちは八月の海だね』

貴方の言葉だけがまだ熱い

眩しい光に照らされて

私たちはいつも輝いていた

生き急ぐ夏に飛び込んだ





季節が夏を手放した

一緒に歩いた砂浜も

誰一人いなくなった





いつだってスニーカーの貴方は

いつだって軽やかな足取りで

私の先を行ってしまう

砂に細いヒールが深く刺さって

私はもう動けないみたい





さめざめと降る雨の中

寄せては返す冷たい波

もし飛び込んだら

あの言葉の熱を奪ってくれるかな

「もう私たちは九月の海ね」

そう呟いた私の命を

海は抱いてくれるだろうか



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