死の闇をはらう
						
竹原桜姫


貴方は今どこにいるのか
わかっていれば手紙でも出せるのに
貴方は今何をしているのか
わかっていてもどうしようもない
死は「今」を奪い去る

貴方の夢は何だったのか
聞いたところで無駄なのに
貴方は何を考えているのか
一晩中語り明かしてみたかったのに
死は紡ぐ言葉を遮る

貴方がもし生きていれば
もう仕事をしている年頃だろうか
貴方がもし生きていれば
きっと幸せな人生を歩めただろう
死はありもしない世界を語る

絶望し、悲しみ、祈り、夢を見て
死を「死」たらしめるのは生きている者
純粋な死の中で
貴方はただ眠り続ける

貴方が眠る世界には
死者を隠す常闇がある
私は貴方を思い続け
貴方を包む闇をはらう
死は「死」のままあり続ける




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