うさぎの切手
かねうみ

v(ヴ)の音が得意なのだと唇をゆっくり曲げる人よ ふゆだよ
飼いたいときみが指差す先にいるアザラシのねっとりした眼(まなこ)
ベランダの手すりで跳ねる雨たちの光を爪に引き寄せてみる
コンビニのシュークリームにかぶりつくわれは独りが嫌いなこども
もう少し遠くに飛んでいくようだ 春の始まりうさぎの切手
昼食のパンを選んでいるきみの丸まった背にハイチュウ乗せる
話すことあったっけって電話口 ないからかけた きみが好きだから
初恋の人の名前を思い出し忘れてしまうそれでいいのだ
真っ白なガードレールに寄りかかるわれの踵(かかと)に青いオオバコ
春風に吹かれて光るくるぶしの きみと同じキャンパスにいる



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