網戸の向こう
              かねうみ

インスタントのたまごスープに湯を入れてほろほろ溶かす午前の授業
消防車は冬の季語だね リビングの床に寝ころぶわれを追い越す
撮り溜めておいたドラマを見ずに消す 部屋の無音が濃くなってゆく
携帯をひらいて少し考えて 嫌いな人は一人もいない
学校に行かなくなって三日目のわれの朝にも朝ごはんある
高校の同窓会のお知らせのハガキがひんやり纏う人の手
透明度百二十パーセントの空 われの猫背がぎしぎし軋む
買ってきたボディソープを詰め替えるためにつるりと剥く左足
考えても考えても答えは出ずに網戸の向こうの空が暮れてく
自転車に跨るわれに吹きつけるあらゆる風よ二人になあれ





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